3.ちぐはぐな家族

 

   人それぞれの育った環境や境遇に対する考え方も違うと思う。それによって介護する気持ちにも影響がでるかもしれない。

  

  先ずは私の生い立ちから始めることにする。 

 

 

 「あなたのご両親の学歴を教えてください」

 

 

 「父は東大、母は御茶ノ水女子です」

 

 

  「あなたはご両親のDNAを引き継いでいると思いますか」

 

 

  私の私立高校入試の時の面接の一部である。

 

   

  父は国立や奨学金をもらえるようなところしか行ったことがないので、私立に対して理解がなく、結局は授業料の安い公立の高校に入ったのだが、いまだに両親の学歴を人前で言うのは嫌いである。

 

   必ずあなたはどちらを。と聞かれる。自分が誇れるほどの学歴がないせいもあるが、いくら天下の東大や御茶ノ水と言っても、必ずしも賢いと思えないことも事実である。学生時代はかなり親に反抗した。世間知らずの子供だった私は、学歴に異常なまでの拒否反応を示した。そして半端にぐれて、何をしても中途半端だった。

 

   両親も違う意味で世間知らずだった。

 

  「この世の中で一番大切なのは学歴よ。世の中にはブルーカラーとホワイトカラーとあってホワイトカラーになるには学歴がものをいうのよ」と母は言ったが、高学歴の二人はお金を稼ぐ能力は他の人よりなかったようだ。何しろ楽をして儲ける話に弱い。

 

  私が学生のころ、何だかわけの分からない洗剤を買い込み一部屋を倉庫にしていた。後で分かったことだが俗に言うネズミ講だった。それもその団体の狙いどころに東大卒の名簿が使われて大当たりしたらしい。ほかにもボウリングのピンを洗う機械が儲かるという話に父が乗せられて、出資したとたんにその会社が倒産、夜逃げされたこともあった。