11.手探りの両親との同居

 

  平成○年五月から、父母と私達夫婦は一緒に住み始めた。父と母はお互いのいびきを理由に別の部屋にしたいと二部屋を要求した。三つしかない部屋のうちの二つとはぜいたくな話だと思った。

 

  まず私たちと両親との家族会議をした。家のローンと生活費の話をした。両親が二人で暮らしても家賃がいる訳だから食費や雑費など、二人の年金収入から援助してもらうことにした。

 

 本人達も病院の費用とか健康保険や介護保険とかの支払いもあり、自分で自由に使えるお金がないと、うっぷんも溜まるだろうと思ったので、問題のない範囲でということでお互い協議により決めた。自分の親なので話しやすいのと、それでのわだかまりもないのはありがたいと思った。

 

 この二人の場合は、貯金はあまりないものの、母が教師だったことと、若い頃から年金型の積み立てをしていたので、二人が生きている間中は困らない程度の年金収入があるのは大変助かった。

 

 

  一緒に住み始めると今まで分からなかったことがたくさんあることに驚かされた。母は家事が嫌いで食事を作りたくないのだろうと思って台所には立たせなかったのに、「台所を使わせてくれない」などと怒りだしたのだ。

 

  私が大変そうなのを見て何かしたいと思ったのかもしれないが、表現の仕方がかわいくない。しょうがないので、自分達だけの食器の洗い物をしてもらう事にした。

 

  母は確かに何でもやるのは早いが、いい加減だ。牛乳を飲んだグラスでも、洗剤もスポンジも使わず、牛乳の膜が付きっぱなしで伏せてあるし、茶碗もご飯粒が硬くこびり付いている。こりゃあ駄目だ。と洗い方を教えて上げた。すると今度は洗剤が流されていない。母の洗ったコップで水を飲もうとするとブクブク泡が立つのだ。

 

 

 「これじゃ二度手間になるから、お願いだから台所のものは触らないで」と言うと、「○○子は威張っている。何でも思い通りにしようとする」と、いつもは悪口ざんまいで嫌っているはずの父に言い付けるのだ。父は父で頼られると何とかしようと奮い立つらしい。二人して「○○子はそんなに偉いのか。ぼく達はどこかの老人ホームを探した方がましだ」などと言い出す。これには参った。

 

 

  取りあえず、洗濯をしてもらうことにしたら、今度は朝から4回も5回も洗濯機を回すのだ。1回で済むものを少し洗濯物がかごにたまるとすぐ洗ってしまうのだ。たまりかねて私が、「水道代がもったいないから洗濯物はたまってから洗ってよ」と頼むことになる。

 

  一つの家になると水道代が高いのにはびっくりした。主人と二人でマンションにいた時は6千円位だったのに、この家の水道代は2万から3万円位するのだ。4人としても高い。集合住宅は下水道代を住民分で割るので安いのかも知れないが、文句も言いたくなる。

 

  思い起こせば、私が高校生の頃、「電話代が3万円もするなんて高すぎる。犯人は○○子に決まっている」と母に怒られた事を思い出す。