14.父が硬膜化血腫

 

  

  病院に着くとすぐ、骨の状態を見るために整形外科でレントゲン検査が行われた。骨には異常ないと言われたが、さっき介抱してくれていた男の人が額にハンカチを当ててくれていたのを思い出して、

 

 

 「先生、頭を打っているかも知れないので、頭も検査して下さい」

 

 

 「じゃCTだな。用意してくれ」

 

  頭を検査したところ、やはり血腫が確認され、MRIを受けることになり、その日は予約して帰った。

 

  日を変えてMRIの検査をした結果、

 

 「これは、硬膜化血腫ですね。この病院ではこの手術は出来ないので、大学病院へ紹介状を書きます」

 

  ちょっと離れたN医大に緊急入院することになった。N医大の先生は若いが頭の良さそうな、信頼出来そうな先生だった。偶然にも同じ苗字の先生だった。

 

 

 「手術が必要です。それほど難しい手術ではありませんが、失敗の確率がゼロパーセントではありませんし、手術して成功したとしても脳のことですから、右半分が利かなくなることもあります。

 

  頭蓋骨にドリルで穴を開けて溜まった血を吸い取る手術ですから、ちょっとずれただけでも障害の残るデリケートな手術になります。左側にこれだけ血が溜まっているので、これを取り除いても脳が元の位置に戻るかどうかやってみないと分かりません。脳はフワフワした豆腐のようなものですからね。

 

  この血腫は今回転んだだけではないと思われます。何かほかに原因は考えられますか。何時ごろからのものか分かりますか」

 

 

 「1年以上前ですが交通事故に会い、放って置いたことがあります」

 

 

 「1年以上も前か。参ったな。元に戻るかなぁ。やってみましょう」

 

 

 「お願いします」