28.どうしたらいいの

 

 

 「先生に聞いたらやっぱり私と同じこと言っていたよ」

 

 

 「本当に電話したのか」妙にそういうことには鼻が利く。

 

 

  少しの間はそれでおとなしくしていたが、また同じ事を言い出した。

 

 

  そんな事を繰り返しているうちに、父は熱が出てしまった。微熱ではあったが心配なので先生に電話をかけたら、連れて来るようにということだった。また母と父を抱き上げて階段の上げ下げすることになると思った。病院に連れて行くと、先生は入院の準備をしていてくれた。

 

 

  父が「また入院ですか?」と心配そうに聞いた。

 

 

 「○○さんが家に帰りたいと言うので許可しましたが熱が出てはいけませんね」

 

 

 「少しだけです。大した事はありません。それより先生にちょっとお尋ねしますが、娘も家内も運動をさせてくれません。このままでは寝たきりになってしまいます」

 

 

 「○○さん。まだあなたは退院したばかりで安静にしてなくてはいけないのですよ。○○さんのリハビリは焦らないで座る時間を増やすとかゆっくりゆっくり部屋で出来ることをやられた方がよいですよ。お気持ちは分かりますがあんまり焦っては駄目です」S先生は分かりやすくゆっくり大きな声で話してくれた。

 

 

  私が、「分かったの?」と聞くと、

 

 

 「何を言うか。先生と話をしている。黙っていろ」と、父が怒った。まともに座ってもいられないくせに口だけは達者だ。

 

 

  入院することになった。胃の方ももう一度胃カメラをやってみましょうということになり、一安心して、家からいつもの入院セットを持ってきた。このまま病院にいてくれたらいいのになんて思ったりした。2~3日過ぎると父は飽きてくるのか。家に帰りたがった。

 

 

 「やっぱり家の方の食事が美味しいよ。病院は本当に事務的で愛情が感じられない」

 

 

 「調子のよいことばかり言って。先生に退院してもいいよと言われなくては帰れないよ」

 

 

 「先生に○○子から頼んで貰えないかな。家に帰れば美味しいものを食べさせるので家の方が栄養も摂れて回復も早いから退院させて欲しいと」

 

 

 「何で私がそんなこと先生にお願いしなくてはいけないの?」

 

 

 「○○子の方が先生に信用されているらしい」

 

 

 「何でそう思うの?」

 

 

 「だって先生は○○子と同じことを言う」

 

 

 「馬鹿じゃないの。先生から聞いた事をお父さんが理解しないから私が分かりやすくお父さんに教えているのよ。同じ話になるのは当たり前よ」

 

 

 「どうもあのS先生とぼくとは意見が違うようだ」

 

 

 「お父さんは患者でS先生はお医者さんなのだから、お医者さんの言う事を聞くのは当たり前よ。お父さんの素人の考えなんか関係ないのよ。お父さんは何にも考えないでS先生の言う事を黙って聞いていればいいの」

 

  父と話せば話すほどこっちの頭がおかしくなりそうだ。何しろ父は自分の考えが正しいと思い込み過ぎなのだ。介護する方としては本当に扱い難い。入院して1週間もしない内にS先生に呼び出された。