53.父が帰って来るための準備

 

 

 次の日から母の部屋の掃除が始まった。私自身も暑い日が続いてくたくたに疲れきっていた。

 

 数日後に父が同じ部屋の人と大喧嘩をしたと老健施設から電話があり、看護師長さんが気を利かせて一人部屋がちょうど空いたので父をそこに入れてくれたとのことだった。一人部屋は通常料金のほかに部屋代がかかるのだが、10日後にはこの部屋に入所が決まっている人が居るので10日間だけなら無料でいいという。それに甘えて平謝りでお願いした。10日後に退所させなくてはいけないと思った。

 

 

 いつものことながらケアマネージャーのKさんに連絡して帰ってからの相談をした。ベッドや車椅子など前に借りていたものは全て返却していたので、再度環境を整えることになった。

 

 デイサービスや月に1回のホームステイも再開させたかったが父の顔や状態を見てからということになった。在宅酸素の会社はわざわざ老健施設まで配達してくれていたので、父が家に帰ってくると連絡した。何しろ父の部屋の環境づくりを早くするために母の部屋の整理を早急にしなくてはいけない。

 

 テレビで何でも要らなくなった物を1㌔100円で買ってもらえる所が近郊にあるというのを見たことを思い出し、テレビ局に電話をしたが待たされるだけ待たされたあげく分からないという。インターネットで検索したり、電話帳を引っ繰り返して、リサイクルで何でも引き取ってくれる所を探した。

 

  他人から見ればゴミのような荷物を引き取ってくれる所はそう簡単には見つからない。1㌔千円から引き取るという所はあるが全部出すと何万円にもなる。少なくてもお金をもらえるのと何万円も払うのでは大きな開きだ。中には高価なものも少しはある。無料で引き取ってもらえる所があればよいと思いながら何軒も電話して、隣の駅の近くに何でも持って行ってくれる所を発見した。次の日に取りに来てくれた。年輩のおじさんだったが76歳だと言うのでびっくりした。

 

  母は衣装持ちで、気に入ると何着も同じものを色違いで買っていた。たぶん、私の3倍位の服は持っているだろう。それを入れる衣装ケースも壁を取り巻くほど積み重ねてあった。部屋は2階なので1階まで降ろすのは私の仕事だ。高齢なリサイクルのおじさんにはそこまで頼めない。何回往復しただろうか。洋服をゴミ用のビニール袋に詰めて運んだ。洋服は意外に重く、弱いビニール袋だとすぐ破れてしまう。3時間ほどかかりようやく終わりが見えてきた。おじさんも私も暑さの中、汗だくでもうフラフラだった。終わったあと冷たく冷やしたペットボトルのお茶を2本持って駐車場でおじさんと二人で飲んだ。